小林多喜二

「闇があるから光がある。」そして闇から出てきた人こそ、一番本当に光の有難さが分るんだ。世の中は幸福ばかりで満ちてゐるものではないんだ。不幸といふのが片方にあるから、幸福ってものがある。
-[1908-33] プロレタリア小説家 小林多喜二(代表作:蟹工船)の書簡より-

小林多喜二は、戦前、特高警察に捕まり拷問死したんですよね。世界中に「~主義」の嵐が吹き荒れていた頃です。世界の主流は長年の伝統を誇る「帝国主義」で英国も日本もそうだった。この頃の帝国主義っていうのは今とイメージがだいぶ違ってて富国強兵やら軍事大国っていうのは大方肯定的に受け取られていたという背景を学校ではあまり教えない。今じゃ軍事アレルギー国家日本だから、考えられない世の中だね。その中で、共産主義的色合いをまとった小林多喜二は危険人物とみなされていたわけだね。しかし彼のこの言葉には重みがあるよね。極力、「不幸」を排除しようとしてきた戦後日本。そのイデオロギーは戦前のすべてのものを排除しようとしてきたことにあると思う。しかし、幸せは「闇」がなければ光がないわけだから、大衆は新たな「闇」をつくってきたわけだ。その闇はかつての体制が作り出す闇と違って個人の心が作り出す闇なわけだから、解決の処方がない。人間ってつくづく怪奇な生き物だと思うなあ。なんせ神と悪魔の概念をつくった動物だもの。それは自分の心の中を投影しているだけなんだ。この人間のみが感じる「幸せ」なる感情を満たすためにいったいどれくらいの「不幸」が必要なんだろう。

月別 アーカイブ