池波正太郎

「某(それがし)、金力を忌(い)み、つとめて立身の事をも避け、一介の弓術者として生き、死ぬることをひたすらに願い続けてまいった。されば、今の浮世に奇人とよばれる所以(ゆえん)でにござる。なれど、某、本心は人一倍に金もほしく、立身出世も好きな男なのでござる」
「え・・・?」
「好きなればこそ避けて通った。おわかりかな?・・・世にある奇人たるもの、みな、某(それがし)と同様でござろう。年若き頃、兄・十右衛門の牢死に出合うてより、某は、このような男になってしもうた・・・」

-[1923-90] 浅草出身の時代小説家 池波正太郎「弓の源八」より-

江戸時代の人々もわれわれと同じくカネにも出世欲もあったことを表していてこの「弓の源八」って好きなんだ。
人間の本質は変わらないんだろうけど、その時代の空気とモラルが大きく行動に影響するんだろうな。
堅物で徹底して出世もカネも拒みまわりから聖人のごとく思われていた弓の達人源八のホンネがでるクライマックスのところなんだ。
池波正太郎との出会いはアメリカに留学していたときだった。
伯母夫婦の家にステイして大学に通っていたんだ。
ある日日課の掃除をしていたときに、珍しい日本語の文庫本があるではないですか!
伯父はアメリカ人なんで日本語はわからないし、伯母は陽気で日本人離れしてイケてる女性だったのでこんな本を読むなんて信じられなかった。
その本のタイトルは『鬼平犯科帳』ズラっと並んでた。
この時点でハタチそこそこのバイカー修ちゃんは今と違ってまったく時代小説なんて読んだこともないし、興味もなかったんだ。
しかし・・日本語恋しさに読み始めてみると・・・ハマってしまった。
そのおもしろいこと、おもしろいこと。伯母に聞いたら、日本にいるとき池波正太郎が好きでアメリカに持ってきたのだそうだ。
これからバイカー修ちゃんは時代小説はおろか歴史に興味を持つようになったのでした。
最近も『仕掛人・藤枝梅安』や『剣客商売』 をひっぱりだして読んだくらいなんだ。
みんな食わず嫌いはやめて読んでごらんよ。おもしろいよ~。

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