カズオ・イシグロ

ノスタルジアは決して存在しない理想の記憶なのである。

過去を振り返ってはいけないと人は言う。

そうだろうか?我々はノスタルジアにもっと敬意をはらわなければいけない。

‐[1954-] 長崎市出身の英国人作家 カズオ・イシグロ 2011年の発言‐

バイカー修ちゃんはカズオ・イシグロを『日の名残り』という映画で知った。

この映画を観たのは、大好きなアンソニー・ホプキンスが主演だったからだ。

彼は『羊たちの沈黙』の犯罪者ハンニバル・レクター博士役があまりにも強烈だけど、僕は『日の名残り』こそアンソニーだと思ってる。

猟奇的だったりショッキングさ、奇想天外な設定のドラマばかりがヒットするけど、本当の物語は日常の中にどこにでもあるものこそが素晴らしいと思っている。

映画そのものが悪かろうはずもなく、英国のまじめな執事の愛の葛藤というまさしく英国調の映画であったのだが・・・、原作に「カズオ・イシグロ」とあるでなないですか!

カズオ・イシグロ?石黒一雄?だれだこりゃ?日系英国人か?

調べると・・・なんと長崎市の出身者で英国に国籍を移した人とあるではないですか!

なんと彼が育ったのは僕が育った町のすぐ近くで、僕が1歳の頃に、お父さんの仕事の関係で英国に移ったそうな。

『日の名残り』原作もすばらい。ぜひ読んでください。

また、最近『私を離さないで』も映画化された。彼にしては設定が奇抜な物語だ。

彼の小説はどれも、過去を振り返る。

その過去はいつも現実ではなくて、美化されたノスタルジーとなるという。

僕はカズオ・イシグロを読んで合点がいったことがある。

それは僕の趣味のバイクのことだ。

僕はヴィンテージ・バイク・・1970年から90年代のバイクが好きで、いま7台持っている。

それを新車なみに仕上げていくことに無上の喜びを感じている。

最新型のバイクにはほとんど興味がないんだ。

この答えが彼の小説でわかったんだ。

それは、自分のノスタルジーを具体化しているんだってこと。

いちばん古い71年型のカワサキ650W1SAは、僕が中学生時代に父が乗ってたものだ。

僕のバイクへの憧れそのものだった。

72年型のカワサキ900Z1は、小学生のころからのスターだった。

73年型のBMW R60/6は、見かけると走って追いかけたくらい夢のまた夢だった。

82年型のドゥカティ900MHRは、雑誌でしか見たことのないイタリアのスーパーバイク。

脱サラ独立したときに手に入れた自分へのご褒美。

85年型のスズキGSX1100Sカタナは、大学生時代からあこがれにあこがれたバイクだった。

寝ても醒めても、雑誌の写真を見ながら眠り、いつか手に入れると誓ったバイクだった。

そして97年型のハーレーダビッドソンは父の夢・・・死ぬまでに一回ハーレーを手に入れたいと昔から言ってたから、父へのプレゼントだ。

思えばそのバイクの年式そのものが僕の人生だった。

一台のバイク。普通の人が見たらガソリン臭い古いバイクなんだろうけど、僕にとって彼女らは僕の人生そのもの・・「タイムカプセル」なんだ。

古いボルト、硬くなったゴム、さびたフレーム、赤くこびりついたオイルの後、それがすべて僕の年齢の証。

それをきれいにしてくプロセスが、自分自身の過去を検証していくことと重なっていく。

バイクが美しくなると、自分自身も若返ったような気がするんだ。

あの頃は、乗ってるだけで楽しかった。

あの頃は、追いかけるだけのあこがれだった。

あの頃は、雑誌の中だけのスーパースターだった。

いま、それが自分の目の前にある。

バイクに乗り続けるためにジョギングはじめて20年になった。

ノスタルジーに浸り、過去を愛でて今をすごし、未来のエネルギーにもなっている。

望むべくは、僕がこの世から消えても、息子がこれを所有してくれること。

過去を振り返ることはたんなる感傷かもしれない。

でも、過去を愛でることは、いまの生きがいとなり、未来をも創るのかのしれない。

僕はそう信じてる。

さあ、午後は暗くなるまでバイクをいじって走らせよう。

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コメント(10)

彷徨うkyotiriさんおはよう!
ぜひカズオ・イシグロの『日の名残り』観てください。
秘密だけど・・・男って情けないくらい過去思考ですよ。
たぶん旦那さんも僕と似てるんだと思うよ。
CB750かっこいいですよねえ!
でも僕のカワサキ900Z1もなかなかセクシーですよ!
もうモトグッチ「アイローネ」なんていうのは芸術の領域ですよね。
走るだけでも驚異的です。
たぶん女性はノスタルジーではなくて、外見の美に感覚が動くんですよ。
女性は未来思考だからね。
バイクなんていうのはほとんど男性がデザインしているからね。
ガンダム世代のデザイナーが生み出したバイクに僕らは感動しないんだよねえ。

dragononeさんおはようございます!
じつは父の仕事(バンドマン)の関係で前川清さんはよく知ってました。
昔長崎にあったキャバレー「銀馬車」におられました。クールファイブのメンバーの方々と・・・。
みんなから「しゅん坊」とよく可愛がってもらいましたねえ。
だから、デビュー前の「長崎は今日も雨だった」も生で聞かせてもらい子供心に「いい歌だなあ。ヒットするかも!」って思った記憶があります。
今度その曲を聴かせてくださいね。
自粛なんてふっとばせ!夜の銅座にくりだしましょう!

修さん、お久しぶりです。

カズオ・イシグロさんの事は知りませんでした!早速調べて映画も見てみようかと思います。
しかし、バイクはそうなんですね~
旦那もそうなのかしら?男の人のバイクに対する思いというか
正直、旦那も古いタイプしか興味ないし
ピカピカに磨き上げることに、至上の喜びを感じてるみたいだし。。。
私は、運転してる時の感覚とデザインの好き嫌いが大きいかな?
たまたま、古いバイクの形が好きで。
特に1969年のHONNDAのCB750とかが好きですけどねぇ
女の人と、男の人では思いが違うのかしら?それとも個人的違いなのかしら?

こんばんは。
今日のお昼は、ほんの会釈しかできず失礼しました。

修さんがバイクを愛でる気持ちを自分自身に置き換えるならば、私は演歌でしょうか。
演歌が斜陽だからとかではありませんが、基本、夜の街で好んで良く歌うのは70年代から80年代後半までですね。
その曲が出た頃(流行っていた頃)の時代背景と自身の在り様を少なからず重ねます。

前川清の唄に「昔があるから」というものがあります。
歌詞を直接記載してJASRACからクレームがきても困りますので要約すれば、「良くも悪くも昔に感謝し、昔があるから頑張れる」という感じものです。
酔いが回ってきたら、ふと唄いたくなる一曲だったりします。

icc-kazukiくんいらっしゃい。
19歳ならそうでしょう。考えるのは未来しかない。
これまでは一年が長く感じていたんですよ。
歳をとるとわかってきます。
一年のスピードがどんどん速くなってくる。
音楽だって、いまは新しい音楽を追い求めてるでしょう?
これが僕くらいになると、新曲よりも青春時代の曲を繰り返し聞くようになる。
いまの段階ではどんどん未来を追い求めてください。

松さんいらっしゃい!
世界を又にかけた松さん。僕らの古い空冷バイクがなぜ可愛いのか?
これこそ、過去のよきノスタルジーへの想いですよ。
自分の青春時代の思い出・・・。
ハーレーが売れるのもここに理由がある。
新しくなっても「カタチが変わらない」昔あこがれたハーレーのイメージをいまのハーレーも裏切らない。
ここに秘密があるような気がします。
では松さんのブログを読ませていただきます。

TDkeisukeくんはじめまして!
コメント嬉しいです。やっぱりダイレクトに読者の声を聞けるっていうのは嬉しいですよ。
どう感じたかっていうのは次回のコラムの発想にとても大事なんですよ。
これからもコメント宜しくお願いいたします。

こんにちは。先日、長文のメールを出させていただきました就職活動中の者です。

船橋社長の「ノスタルジーを具体化」「過去を愛でる」 どれも私にとって新しい発想でついつい読みふけってしまいました。

私もバイクに対し、夢を持っています。
中学生のころからビックスクーターが大好きで憧れていました。
それから数年経ち、私も普通自動二輪免許も取得し、夢に一歩近づくことができました。
しかし、まだ若干19歳の私には、ノスタルジーよりも未来が先行してしまいます。
いつの日かもっと成長した際には、過去を見て未来に進める力となるような生き方をしたいと思いました。

今後も更新を楽しみにし、読ませていただきます。

修さん おはようございます。

週末バイク乗られたみたいで 陽気も良くなったし 一度修さんに 私のFもどき見てもらいに行こうと思ってるんですが 乗る事さえ 毎回久々の私です。

私も過去を大事にする事は良い事だと思いますね~ 時に良かった事とか 楽しかった事をなんかは、何度思い返しても 良い物です。

ただ 過去に学んで自分を成長させる・・・・これが出来てない私ですので こんな感じなんですけどww

バイクに関してはここじゃ書ききれないので 自分のブログに書いてしまいました。

Twitterではお世話になっております!


仰る通りだと思います。
過去を愛でる事・・・すごく大事だと思います。
過去を愛する事によりより未来を、過去の成功も失敗も、全て糧として未来を創造していく事が大事ですよね。

今までコラムを読ませていただいていたのですが、初めてコメントさせていただきました!
これからも更新楽しみにしております!

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