松本清張『砂の器』ラストより

『・・・二十二時発、サンフランシスコ行きのパン・アメリカン機にご搭乗なさいます「和賀英良」さまのお見送りの方に申し上げます。和賀英良さまは急用が起こりまして、今度の飛行機にはお乗りになりません。和賀英良さまは今度の飛行機にはお乗りになりません・・・』

ゆっくりとした調子の、音楽のように美しい抑揚だった。

‐[1909-92] 福岡県出身の小説家 松本清張 1961年作『砂の器』ラストより‐

つい先日、テレビで玉木 宏主演の松本清張原作『砂の器』を観た。

ご存知のように松本清張作品で最も有名でヒットした傑作小説ですよね。

バイカー修ちゃんはこの『砂の器』のフリークなんですね。

じつはバイカー修ちゃんの高校生の息子も自分でこの『砂の器』を買って読んでるんです。

家の書庫の中に、僕の『砂の器』があるにもかかわらず!・・です。

1961年作だからじつに40年も前の作品です。

玉木さんのドラマも良かったし、以前・・中居正広さん、渡辺 謙さんでもドラマ化されましたよね。

でも今回は、1974年に放映された松竹映画『砂の器』を取り上げたいと思います。

当然バイカー修ちゃんはDVDも持っています。

あの玉木さんのドラマを見終わった後・・・一人でこの映画のDVDを観ました。

この映画は、ある意味原作を超えていると思うぞ。

こんなケースは極めて稀だろうな。ほとんどの映画は、その上映時間の制限から「原作のダイジェスト版」の運命をまぬがれない「宿命」―――この映画で加藤剛演ずる天才ピアニスト和賀英良(えいりょう)が最後に演奏する曲のタイトルでもある―――にあるがこの映画はそうではない。

原作の設定とストーリーを大幅に変更して、恩人殺しに手を染めた、犯人・・和賀英良の半生に2時間半に及ぶ大長編映画のラスト30分ほどもさくという、大胆な手法でじつに感動的な映画になっている。

まったく別の作品だといってもいいくらい原作と印象が違っている・・・が、だからこそ成功したと思うぞ。

僕は高校生の頃、学校をサボって補導員の目から逃れるために長崎の松竹映劇に入り、偶然この大作を観た・・・、泣けて泣けて声をあげて泣いて、続けて2回観た(当時の映画館は入れ替え制じゃなかったんだね)

僕の人生観を変えた映画だと言っていい。

その後、松本清張にハマり原作も読み、DVDも「宿命」のCDも買った。

あの「大岡越前」の加藤剛さんがおそらく初めて演じる悪役・・・恩人殺しという設定からオファーを拒否する俳優もいたらしいから、加藤剛さん一世一代の当たり役だと思っている。

今日の一言は、原作の方のラストシーンなんです。

映画のコンサートホールでの逮捕直前の印象とはまったく違っていますよね。

人生の飛行に乗れなかった和賀英良・・・意味の深いラストシーンだと思います。

でも映画でこれでは凡庸な作品になったでしょうね。

映画は小説とは違う芸術だと割りきった構成でこの映画は偉大になったといえるだろうな。

このあまりにも偉大な映画のせいで、テレビドラマはまったくかすんでしまっていると言ってもいいと思うぞ。

ハンセン病(昔はライ病といったんだよ)にかかり村を追われる父、本浦千代吉に連れられて和賀英良こと、本名本浦秀夫の二人は、山陰の四季を背景に乞食(禁止用語ですがあえて使います)となってさまよう親子・・・。

この過酷な幼少時代が、秀夫の心に天才的な音楽的才能を開花させ・・成功の階段を昇りはじめたそのとき、彼の戸籍詐称の忌まわしい過去を知る恩人、三木謙一が現れる・・・。

人の限りない善意が、とんでもない結末をうんでしまう不条理・・・まさしく昭和の日本が抱える不条理を体現した物語だ・・・・とさえ思う。

もう何度観たっけ・・・、僕は自分自身が「和賀英良」なんじゃないかって思うことがよくある。

悪意も耐え難いが、善意の押し付けも苦しいものだ。

本人がよかれと思ってやっているから余計にそうなのだ。

僕らは「和賀英良」に比べたら、平凡な人生だ。

しかし「平成」という嘘と欺瞞で満ちた「平和な日本」で誰しもが「和賀英良」になっているんじゃないかな。

皆さん、原作の『砂の器』も読んでほしいけど・・・大作だからちょっとハードかも・・。

でも映画を観てください!松本清張自身もこの映画には賞賛の言葉をおくっています。

「小説ではこんな表現はできない・・」と言ったそうです。

皆さん!ぜひこの松竹映画『砂の器』を観てください。

バイカー修ちゃんが保証します。素晴らしい映画です。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.q-bic.net/mt4/mt-tb.cgi/2101

コメント(4)

人志マンさん、いらっしゃい!
なんと!小倉の松本清張記念館までいらしたんですか!
そこで「砂の器」の原作とDVDを購入・・・。
こりゃ僕が買わせたようなものだから、責任問題ですねw(゚o゚)w!

でも、映画・・・重かったでしょう?
わが家では親子三代全員で観ましたよ。もう涙をこらえながら無言でしたね。
あのラストで演奏する「宿命」って曲のCDも販売されているんですよ。
落ち着いたら感想でも聞かせてくださいね(^_-)-☆

おはようございます。修さん。
10月9日(日)に小倉の松本清張記念館に行ってきました。もちろん、「砂の器」の原作本とDVDを買うために。その夜早速、視聴しました。
「砂の器」もそうですが、当時は社会派映画、ドラマが多く、その重厚なテーマが10~12歳の自分にはとても最後まで見れなかったと思います。
作る側(脚本、演出、音楽)の統一した核心が、見る側に受け入れる器量がないと耐え切れないほど作品でした。(今回も女将さんは、途中でリタイアしました)
今、原作を読んでいます。映画と比べながら、小説での愉しみを味わっています。
P.S:長崎くんちの応援にいけず、すみませんでした。

あれ~!!章子ちゃん!!!
なつかしいなあ!!
ミスの時代は、「おおむら夏越まつり」キャラバンで毎日毎日あの白いスーツを洗濯するヒマもなく長崎県下はおろか福岡まで行ったよねえ!
元気にしてますか?章子ちゃんのあの底抜けに明るいキャラで行く先行く先がパーっと明るく盛り上がったよねえ。
僕の頭じゃ20年前から記憶がとまって章子ちゃんはあのままです(笑)
大村に帰ってくることはあるんでしょうか?
「バイカー修ちゃん・今日の一言」もよろしくお願いします。

 おはようございます。
大変ご無沙汰、いやあれから20年以上経ったかしら?
お元気そうで何よりでございます。

夜な夜な楽天サイトより、長崎のホテルを検索していましたら巡り巡って、修ちゃんのブログに辿りつきました。

『砂の器』私も大好きな作品の一つです。
小説を読んだり、映画(TVドラマ)を観たり、感じ方や捉え方がその時の年代によって違う気がする、奥の深い作品ですね。

又ブログ楽しく拝見させてくださいね。
では、また。。。。

     元 ミス花菖蒲の章子(あきこ)でした(笑)

コメントする

月別 アーカイブ